2011年10月20日木曜日

No.29国際協力の現場から:急がば地元主導




 日本で暮らしている人なら、日本が地震多発国であり、火山の噴火、風水害など大災害が起きる国であることを知っている。阪神淡路、中越、奥尻、中越沖などでの甚大な被害も記憶に新しい。それでも、日本がこれほどの支援の受け入れ国になると鮮明に意識していた人は少ないはずだ。9月14日時点で124の国・地域・機関が、175億円を超える寄付や物資を3.11の支援のために日本国に寄せてくれた 。因みにJENが現在も支援を継続しているアフガニスタン、イラク、スリランカ、スーダン、パキスタンなども支援国として名を連ねてくれている。日本も立派な『被援助国』となった訳だ。日頃の恩返しと喜んでばかりいるのではなく、この支援をいかに効果的に活かすかを考えて、今後のより良い支援のモデルとなるような取り組みがしたいものだ。実際、誇れない意味でガラパゴスと言われる『先進国日本』での支援も、支援という意味では極めて似通った問題をはらんでいる。

 一つは、復興支援の在り方だ。

 今回の被災地の中で、震災前から経済的に苦しんでいた地域は多い。その状態が構造的なものであるならば、その構造を変えない限り復興を進めても未来は明るくない。災害の前から駅前はシャッター通りと呼ばれ、郊外の大型店には人が集まるけれど街中のお店には活気がないが、個々の企業の涙ぐましい努力によって街が支えられている。そんな街では、日々の暮らしを支える緊急支援は確かに必要だが、長く続けすぎれば依存を生んで、問題は解決されず、却って元々地元にある底力を弱めてしまう。世界の復興の現場でも、根本的問題である構造の変革に取り組まない支援は、状況を悪くしている。構造に取り組むことは簡単ではないが、独創的な解決方法を生み出し、実施して効果を上げ、モデルとなることができれば、世界の復興支援の質の向上にも貢献できるはずだ。

 もう一つは、その取り組みの在り方だ。独創的な解決方法は、現場を熟知することで初めて可能となる。なぜならば、成功のカギとなるのは、継続的に関わる人々の熱意と人手と資源だからだ。資源は必ずしも資金ではないが、現場を熟知しているにも拘らず被災された方々は、自分たちの持っている資源(宝物)に気づいていない場合も多い。悲しみと喪失感と生活苦と将来への不安が、被災前より更に、宝物の存在を見えづらくさせている。そこで『よそ者』である我々支援団体との関わりなどを通して宝物の再発見をすることになるのだが、自ら気づかない限り、宝物も有効活用しづらいのだ。既に言い古された感すらある『地元主導』を辛抱強く推し進めるという取り組み方が明るい未来を約束する。こんな当たり前と思えることを進めることは、現実には易しくない。急いで生活再建を進めないと、復興の担い手である地元の人々が流出してしまうからだ。辛抱強く自立支援を急ぐ日々が、現場では続いている。

(写真:輪になって座って、お茶を飲む。ただそれだけで会話が弾む。)

(ニュースレターNo47より転載)