2020年3月11日水曜日

3月11日に寄せて


 今年も311日を迎えた。
 9年経った今も、避難生活を強いられている方もいる。東日本大震災と福島原発事故は、直接被災していない人も含め、多くの人の人生を完全に変えてしまった。
あのような悲劇は、二度と起きて欲しくないが、地震や災害を止めることはできない。ではどうすればよいのだろうか。いうまでもなく、被害を最小限に食い止め、影響を一刻も早く抑えて被災状態の長期化を防ぎ、素早く復興することだろう。つまり、そのための準備を怠らないことが、次善の策なのではないか。とはいえ、全ての災害を想定し、準備することは不可能だ。ではどうするか?『想定外への対応力を高める』ことに尽きるのではないだろうか。

 東日本大震災の被害も広い地域にわたり、且つ物流も情報も寸断された。一人の優れたリーダーがいたとしてもその一人の采配だけでは、全地域での緊急対応も、被害を最小限に食い止めることもできない。各地の現場で状況を的確にとらえて判断し、最少の努力で最大の効果をあげられる行動を見つけ出し、持続可能な仕組みを提案し、周りを巻き込んでやり遂げられる人が必ず必要だ。そんな人が各地に一人いればよいのではなく、全ての人がそれを理解し協力し合うことで、物事が進んでゆく。大きな災害を経験した地域の中でも、元々の地域の絆が強く、安心できる協力体制が既にあった地域では、復興の立ち上がりが早いことはよく知られている。
 また、被災地域だけでは問題は解決できないので、直接被害を受けた地域の外からの協力が不可欠となる。これも、元々あった信頼関係や協力的な絆がモノを言う。平時から日ごろから、協力し合うこと、情報を冷静に集めて分析し、自分の頭で考えて判断すること、それを周りの人と分け合って判断の精度を高めること、自分の住んでいる地域で起きていないことにも想像力を働かせて支えること、そして、これらを温かい雰囲気の中で実行することで人々を励まし、安心感を与え合えること、こうした力を日ごろから養い、強化し、発揮することで、想定外への対応力が高められると思う。
 そんなことは分かっている、と人は思うかもしれない。ただ、想定外は今この瞬間にも起こりうるということを痛感できないから、日々の他のことに取り紛れて準備の一歩を踏み出せないのかもしれない。

 だから、せめて311日くらいは、亡くなられた方を偲び、被災された方に思いを寄せ、彼らの無念の思いを受け止めて学び、私たちの日々の暮らしを変え、今も避難生活を続ける方々を支えるのはどうだろう。他者を支えるように見える行為はそのまま、結果として自分を救う力の獲得でもあり、更に周りの人々を支えることにもつながる。想定外への対応力が高ければ、正体不明の感染症への対応力も高まるはずだ。それは、一人ひとりが希望を持てる未来へとつながっている。