2010年1月20日水曜日

No.22 国際協力の現場から:現地スタッフ能力発揮プロジェクト、始動!



 新年を迎えても、おめでとうと言えない位、各地の治安が悪化している。JENが支援事業を展開しているのは現在8ヶ所。治安や制度の制限を全く受けず、国際スタッフがいつでも自由に事業実施地まで行けるのは、なんと新潟だけだ。アフガニスタン、パキスタン、イラク、スーダン、スリランカ、ミャンマー、インドネシアの7カ国では、それぞれの理由で行動の制約を受けている。

 これまでは、地元の人と車座になって座っていつまでも話し合いを続けたり、地元の人が食べるものをご馳走になったり、じっとしていられない様な寒さの中、到着するトラックを地元の人と共に何時間も待ち続けたり、といったことを通して、言葉だけでは伝わらないものを国際スタッフも五感で感じながら事業を実施してきた。そういうやり方で被災者の状況や課題を深く理解するからこそ、彼ら自身が課題を解決してゆくことを支え、促し、見守ってこられたと思う。これからは、これを現地スタッフに担ってもらうしかない。

 そもそも、なぜ現地スタッフでなく国際スタッフがこれを担ってきたのか。様々な理由があるが、最も大きいのは『よそ者』としての関わりの大切さだ。現地の常識を覆す様な提案を、現地スタッフがすれば、地元の人々に取り合ってもらえないことがある。現状を変えられないと思い込んでいる地元の人々の中にあって、よそ者である国際スタッフたちは、より抵抗感少なく、現状を変えられることを伝え、変えようとする人々を勇気付けることができた。よそ者だからこそ取り組める課題がある場合もある。現地の常識を理解しながらも敢えて非常識な提案をよそ者がすることで、被災者の課題解決能力がより活性化されるのだ。

 事業地に国際スタッフが行けないという制約のために、このよそ者の役割をも現地スタッフにやってもらわなければならなくなってきた。よそ者でない彼らは、我々国際スタッフなら簡単に乗り越えられた『常識の壁』に激突しなければならない。それをも乗り越える潜在能力を彼らは元々持っている。その潜在能力が最大限に発揮できるようにサポートするプロジェクトをJENは2010年、開始する。これまでの『単なる能力強化』ではない。真の地元のリーダーを育成できるリーダーが育つことをサポートするのだ。厳しい状況だからこそ、JENの事業も進化しなければならない。新しい年の始まりとともに、JENの事業も新しい方向に、大きく舵を切った。

(写真:インドネシア・スマトラ島、パダン市郊外の学校にて。地震についてを学ぶ児童。ワークショップでは、教室でメカニズムを学び、実地の非難訓練を行います)

(ニュースレターNo.40より転載)

2009年10月20日火曜日

No.21 国際協力の現場から:効果は続く



 8月下旬、スリランカに出張して感動したことが二つある。

 一つは、現地スタッフの活躍ぶり、もう一つは完了した事業の効果が持続していたことだ。
『現地主導』も『持続可能な支援』も、昨今は当たり前のこと。良い支援の必要条件ではあるが、実現するのは簡単ではない。大いに成功している好事例を確認できて嬉しかった。

 2年前に東部での農業支援を始めた際には、土地の人びとが
「砂地なのでうまく行かない」
と口々に言ったそうだ。それを、南部での経験を経て東部へ転勤したスタッフが、説得してくれた。
「南部も同じ砂地だが、成功した」
しかも彼は、東部のJENスタッフに丁寧に説明し、スタッフ全員が心から成功を信じるようになった。成功を信じているスタッフと触れ合う内に、帰還した避難民も、努力が無駄にならないことを納得して農業を始めたという。始めてみればぐんぐん効果が上がる。私が会った帰還民は、みな農業の拡大計画を口々に語った。

 その後だったこともあり、完了から3年も経つ南部の事業を視察に行くのは期待と不安が交錯するものだった。何と言っても農業だ。気候の影響を受けて失敗していても不思議ない。

 行ってみて驚いた。どの家でも、バナナやヤシやその他の野菜が所狭しと生い茂っている。その成長ぶりからも、下草のなさからも、手入れのよさが良く判る。ある女性は、ぶどうの苗を庭いっぱいに育てて、ビジネスを始めていた。『絵に描いたような』自立をみんな果たしていた。

 世界各地で災害が多発している。支援はいつも行き届かず、支援団体全体の力不足を感じざるを得ない。問題を一つずつ解決してゆくしかないことは周知だが、今この瞬間にも厳しい状況にある人々の苦悩を思うとき、もっと早く、もっと多くの支援を提供したいと単純に思う。

 ただ、ことが起こってからの対処には限界がある。先進国でも、発展途上国でも、いかに事前準備をしていたかで、被災状況が大いに違う。個々人の自立と、コミュニティの自立は最善の再発防止策になっている。地道な自立支援が、やはり答えなのだと思う。

(写真:スリランカ北部ワウニアのJEN現地事務所前で、地域の人々と語らうスタッフのクラシリさん)

(ニュースレターNo39より転載)