2012年5月2日水曜日
No.31国際協力の現場から:一歩の大きさ
JENの東北支援は石巻市を中心に実施している。たった一つの市なので、とても小さな地域に限定しているように思われるかもしれないが、どうしてこれが、宮城県第二の都市。だが、本当に驚くのは、その多様さだ。海、丘、山林、平地と多様な地形に、多様な産業が展開し、被災状況も多様だ。その一部に牡鹿半島がある。石巻市全体の人口からみれば、約30分の1であるのだが、牡鹿半島にある33の浜は、それぞれに個性豊かな浜となっている。
状況が多様であれば、復興も多様にならざるを得ない。各浜にあるコミュニティの意思を尊重し、そこにある資源を活かして復興の計画を立てていかなければ、復興が進んでも人々は幸せと感じられないだろう。同時に、現実的に考えれば、石巻の30分の1でさえ33通りの取り組みが必要だと仮定したら、東北全体では、気の遠くなる様な数の取り組みをしなければならなくなる。そんなことが本当に可能なのか、と思いそうな時、アメリカの大学生たちから声をかけられた。
アメリカに留学していた一人の学生が、ある日、東日本大震災の被災者支援をしたいと考えた。イベントをしようという彼の話に賛同した友人が、これを企画書にまとめてニューヨークに遊びに行った。同じ頃、別の大学でも一人の留学生が、東日本支援のためにTシャツを販売した利益を寄付することを思いつく。彼もこれを企画書にまとめて、たまたまニューヨークに遊びに行った。この二人が友人を介してニューヨークで知り合い、企画書の交換をしたところからイベントが本格化した。結局、12の大学を巻き込んでTシャツを販売し、5つの大学で講演会を実施する、という大イベントに発展したのだという。この講演者の一人として招かれたので、行かせてもらって驚いた。どの大学でも推進する学生が皆とても熱心で、聴衆も真剣そのものだったからだ。4泊7日で5か所で講演するという強行軍だったが、皆さんの熱さにずっと感動し続けていた。彼らは、我々が帰国してからもTシャツを販売し続け、寄付額を増大させ続けている。
初めは一人のアイデアが、周りをどんどん巻き込んで新しいことを起こしていく。これは、支援の現場でも同じだ。千里の道も一歩から。一人の力は小さいけれど、みんなの力はとてつもなく大きい。どんなことだって起こせるだろう。ただ、みんなの力は、最初はどこにも存在しない。一人の力がみんなの力を作っていくのだ。自分が最初の一人であるかどうかも、問題ではない。同じ目的を持った人たちとは、必ず出会えるからだ。一歩を踏み出し、語り、巻き込む。その繰り返しが大きなうねりとなり、世界を変えていく。一人が一歩を踏み出した時、既に世界は少しだけ変わっている。
(写真:池谷・入山集落の村人たちが訪れた幾つかのコミュニティ。
温かい湯気とおいしそうなご飯のにおいが立ち込める中、
人びとは、おにぎり片手に石巻の復興について熱く語り合いました。)
(ニュースレターNo.49より転載)
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