2009年7月20日月曜日

No.20 国際協力の現場から:触媒のもたらす効果


 支援には、長い時間がかかる。

 JENのリーフレットにも『10年かかる』とあるが、勿論これは比喩で、実際には更に長い年月がかかる。先だってのイタリア、ラクイラでのG8サミットでも、「まだテントに人が住んでいるのか」と驚いた人が多かったと思う。G8主催国でさえこの状況だ。世界の状況は言うに及ばず、支援を求める人の数は余りにも多く、支援は余りにも遅く、足りない。

 自立支援は、単なる物資の提供や建物の建設などよりも更に時間がかかる。当然、支援の効果が上がるスピードが気になる。急がば回れだと判っていても、焦りがないはずがない。

 その焦りを鎮めてくれるのが、現実に出会う自立の効果だ。スリランカの漁協の組合員が「いかに多くの援助をもらうか」ではなく「いかに地元全体によい影響を与えることができるか」を話し合うようになったと聞けば、自立支援の計り知れない効果を実感できる。

 支援の受け手としても、自立支援はもどかしいに違いない。本当は、自分たちが望む場所全てに、さっさと井戸を掘って欲しいと思っているのかもしれない。それでも、スーダンの井戸管理委員会の委員たちはつかんでいるはずだ。井戸の分解と組み立てを実演して見せてくれた時の彼らの顔に、それはしっかりと表れていた。

「この井戸が壊れても、私たちは直せる」。

 つまり、井戸が枯れない限り、この地域の水は自分たちが確保する、という自信だ。自信に満ちた彼らは、次のステップに進むことが出来る。彼らは、近隣の壊れていた井戸を7本も修理して使えるようにしたという。この時に彼らが味わった誇らしい気持ちが、彼らを更に先に進ませることだろう。

 人は、一つのことで自信を持てると、新たなことに挑戦できるのではないか。身の回りの課題に気付き、それを解決できると信じ、自分と仲間の力で一つ一つそれを変えてゆく。成果が上がれば更に前進できる。あとは支援を受けなくても自立の輪が広がってゆく。自信と誇りを取り戻す。自立支援の大切な効果のひとつだ。

(写真:ミャンマー:JENスタッフを出迎えてくれたテーチャウ村の村びと。手に持っている小さな旗は、トイレットペーパーで作ったもの)

(ニュースレターNo.38より転載)

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