2010年4月20日火曜日

No.23 国際協力の現場から:最高の瞬間とは?



 海外駐在しているJENのスタッフには、年に一度公費で帰国する機会が与えられる。これは単なる休暇ではなく、日頃ご支援下さる方々へのご報告をはじめ、本部での報告や人事面談、健康診断の受診、そして個人的な用事を済ませたりなど、かなり盛りだくさんなものだ。勿論、久しぶりに家族や友人に会って、ホッとすることも重要な『一時帰国』の要素の一つだ。

 こんな一時帰国のスタッフが、ここのところ立て続けに何人も本部に来てくれた。一年ぶりに再会するスタッフは、みんな一まわりも二まわりも成長していてまぶしいくらいだ。ものごとが予定通りに進むことなど皆無である支援の現場で、冷静に、時には熱くなって問題を一つ一つ解決し、支援活動を進めてきた。それぞれ、何かをやり遂げた充実感と自信が漲っている。

 ときには、疲れ果てた様子で帰ってくるスタッフもいる。荷が重過ぎる困難に果敢に立ち向かったから疲れてしまうのだ。そんなスタッフに、この1年間で最高の瞬間はどんな時だった?ときいてみる。すると、購入した資材の搬入が遅れて…とか、住民が協力してくれなくて…とか、役所の許可がおりなくて…などと辛そうに苦労話が始まる。

 文化も習慣も気候も実施している事業も、それぞれ全く違うはずなのに、意外にも殆どのスタッフの答えは同じだ。“最高の瞬間は、苦しい状況を乗り越えたとき”。でも、それには条件がある。単に乗り越えただけでは最高の瞬間にはならないのだ。困難に直面した時に現地スタッフや被災者たちと力を合わせ、気持ちを一つにして、助け合って乗り越える。困難が大きいほど気持ちが一つになる。力を合わせて大きな何かを乗り越えた時、最高の瞬間が訪れる。一人ひとりが、その感動のエピソードを聞かせてくれる。感謝と喜び、達成感に目を輝かせながら。

 人を支えるのも、励ますのも、苦しめるのも、人だ。絆があって人は前に進める。その絆に感謝する時、私たちの命が輝く。

(写真:ハイチ・グラン・ゴアーブにて。家は半壊してしまったけれど、シェルターキットさえあれば、あとはなんとかなる、と答えてくれた女性)

(ニュースレター No.41より転載)

2010年1月20日水曜日

No.22 国際協力の現場から:現地スタッフ能力発揮プロジェクト、始動!



 新年を迎えても、おめでとうと言えない位、各地の治安が悪化している。JENが支援事業を展開しているのは現在8ヶ所。治安や制度の制限を全く受けず、国際スタッフがいつでも自由に事業実施地まで行けるのは、なんと新潟だけだ。アフガニスタン、パキスタン、イラク、スーダン、スリランカ、ミャンマー、インドネシアの7カ国では、それぞれの理由で行動の制約を受けている。

 これまでは、地元の人と車座になって座っていつまでも話し合いを続けたり、地元の人が食べるものをご馳走になったり、じっとしていられない様な寒さの中、到着するトラックを地元の人と共に何時間も待ち続けたり、といったことを通して、言葉だけでは伝わらないものを国際スタッフも五感で感じながら事業を実施してきた。そういうやり方で被災者の状況や課題を深く理解するからこそ、彼ら自身が課題を解決してゆくことを支え、促し、見守ってこられたと思う。これからは、これを現地スタッフに担ってもらうしかない。

 そもそも、なぜ現地スタッフでなく国際スタッフがこれを担ってきたのか。様々な理由があるが、最も大きいのは『よそ者』としての関わりの大切さだ。現地の常識を覆す様な提案を、現地スタッフがすれば、地元の人々に取り合ってもらえないことがある。現状を変えられないと思い込んでいる地元の人々の中にあって、よそ者である国際スタッフたちは、より抵抗感少なく、現状を変えられることを伝え、変えようとする人々を勇気付けることができた。よそ者だからこそ取り組める課題がある場合もある。現地の常識を理解しながらも敢えて非常識な提案をよそ者がすることで、被災者の課題解決能力がより活性化されるのだ。

 事業地に国際スタッフが行けないという制約のために、このよそ者の役割をも現地スタッフにやってもらわなければならなくなってきた。よそ者でない彼らは、我々国際スタッフなら簡単に乗り越えられた『常識の壁』に激突しなければならない。それをも乗り越える潜在能力を彼らは元々持っている。その潜在能力が最大限に発揮できるようにサポートするプロジェクトをJENは2010年、開始する。これまでの『単なる能力強化』ではない。真の地元のリーダーを育成できるリーダーが育つことをサポートするのだ。厳しい状況だからこそ、JENの事業も進化しなければならない。新しい年の始まりとともに、JENの事業も新しい方向に、大きく舵を切った。

(写真:インドネシア・スマトラ島、パダン市郊外の学校にて。地震についてを学ぶ児童。ワークショップでは、教室でメカニズムを学び、実地の非難訓練を行います)

(ニュースレターNo.40より転載)