2011年1月17日月曜日

No.26国際協力の現場から:マヨネーズのように支援する





 ハイチの事業を始めた当初、周囲からは有償でないとハイチの人は協力しないと言われていた。事実、あの手この手でボランティアを募るも一向に集まらず、人々の気を惹くだろうカメラや日当を配ったりして人を集めている団体もあったらしい。そこまでしてやっと70名集まった、などと聞くことが多かった。JENは自立支援なので、コミュニティのために地元の人が活動することに対価を与えることは不適当と考え無償にこだわった。


 ふたを開けてみると、募集予定数360名に対して459名ものボランティアが無償で参加してくれた。それも、ただの人数ではなく、本当に活発に参加して、起伏の激しい土地を徒歩で回り、衛生の知識を伝えて歩く熱心なボランティアだということを、現地を訪問した際に、この目で確認した。なぜ、これ程多くの人が集まったのか。そして、どうしてこれ程熱心に活動に参加するのか。


 現地で働くJENの職員に聞いてみると、様々な工夫を凝らしていたことがわかった。まず、緊急支援の段階から、真面目に一軒ずつ家を訪れ、地震で本当に家が破壊されているのは、どの家庭かを確認した。ここで誰に対しても公平に活動する団体という信頼を得たらしい。


 衛生促進キャンペーンの事業を始めるに当っては、村を束ねる行政区の中心地で漠然とボランティアの参加を呼び掛けるのではなく、文字通り村を一つずつ訪問して、各村から6名ずつボランティアになって欲しいと訴えたという。直接訴えられれば心が動くのが人情か、多くの村から、4~6人が無償で衛生促進員になってくれた。


 衛生促進員が無償ボランティアだと知っている村人は、はじめは揶揄したという。それでもみんなが促進員を辞めなかったのは、衛生促進に対する好奇心なのか、他の理由があったのかは、判らない。ただ、促進員が伝える知識が村人の役に立ち、そのために促進員たちが尊敬を受けるなどという考えは、全く村人の意識になかったことは確かだ。そんな中で、心から促進員を受け入れて、彼らの言うことを実行し、それが村人の健康状態を改善して、促進員の村での社会的地位を上げてゆくことにつながるように、JENの職員は根気強く関わっていったのだ。急ぎ過ぎれば抵抗感を持たれてしまい、何をやっても難しくなる。少しずつ、急がずに根気強く関わり続けた。


 こんなに成功したのはなぜ?問いかける私に、フランス出身の職員が「マヨネーズみたいにやったんだよ」と答えた。マヨネーズは卵の黄身とお酢と油を混ぜて作るが、油を本当に少しずつ加えないと分離してしまう。一度分離したらその材料からは、二度とマヨネーズはできない。かといって余りに少量だと、時間がかかってらちがあかない。限度ぎりぎりまでの量を少しずつ入れて混ぜ続けると、えも言われぬ美味となる。根気強く、急がず、しかし大胆に少しずつ。マヨネーズを作るみたいな地道な努力が、今日も各地で続いている。

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